火鉢と暮らす

⬛︎火鉢のある生活

火鉢

 

火鉢の温もりは、薪ストーブのようにホカホカと贅沢に暖かいのとはだいぶ違っている。

けれど、陽だまりで少しぬくまった部屋に火鉢があると、陽がかげって障子を閉めたあともそのままのぬくもりがあってなんとなく寒くない。

昭和50年頃きちんと建てられた日本家屋8畳の部屋の居間で長い時間を過ごす小寒~大寒(1月5日から20日)の頃は、灯油ストーブだけでは手がかじかんでしまう。

火鉢があるとすごくあったかくは無いけれど不思議に指先がかじかまない。

愛媛県の「鹿ノ川洞窟」ではおよそ30万年前といわれている史跡から人骨や石器と一緒に少量の木炭が発見されたと何かの記述で見た。

貴重な薪を燃やすと熾ができ、燃焼を止めると炭のようなものができ保存もきく。再び着火すると煙や炎が出ず、火は長持ちして調理などに都合が良いということは、火を毎日使っていると自然にわかってくることだなぁと実感できる。

30万年の長い積み重ねに想いを馳せながら、炭焼きの技術や炭とともに暮らす道具やその仕草がここまでに到達し、その延長上でこの素敵さを享受させていただいていることに静かに感動する日々。

火鉢を使うようになってから4、5年が経ち、火鉢に癒されながら色々考えてきとことをちょっとまとめておきたいと思った次第。

■■■使い方について■■■

⬛︎戌の日に新しい灰を入れる

新しい灰を入れ、炭を熾す日。火の用心を祈り「戌の日」を狙って準備をしなくてはいけない。「戌の日は◯日だなぁ」などと言い合って、和合中がだいたい同じ日から始まる冬の暖。私が移り住んで来た2000年頃は確かにそうだった。

炭の健全な燃焼と火力を調整するために大切なのが灰の状態。

灰は灰でも重い灰はダメで、通気性の良い軽い灰であることが重要。
私の場合、毎日の風呂焚きで新鮮な灰には困らないのでシーズン始めには必ず灰を入れ替える。全部は大変なので半分くらい。

何年も前のある日に、たまたま稲藁をひとかかえ(20束;200株分くらい)燃やして灰を作っている方を見かけてその訳と炭の扱いの秘訣を教わることができたのは幸運だった。
すぐに真似をして同じように稲藁を燃やしてみた。黒いような藁灰を入れると何日かで美しい綺麗な白い灰になった。

ふわふわと通気性の良い灰は、炭が温まると炭と一体になってぽわぽわと赤くなって、まるで水のように波打ち不思議だ。このような灰でなければ思ったような火力調節はできない。

⬛︎火鉢を使うのにあると便利な道具

火鉢

五徳

小ぶりな火バサミ(トング)

灰ならし(灰を寄せる道具)

火起こし(炭に火をおこすために)

大きな植木鉢を載せるためのキャスター付き台(可動式になると断然便利)

⬛︎火力調節

始めの着火は火に炭を入れるとか、ガスコンロで「火起こし」を使うなど、やり易いようで。

着火時は炭ひとつひとつが全体に赤くならなくても2つか3つの炭がそこそこ赤くなれば良い。

火鉢の中心をかきわけて、炭が入るような直径のくぼみを作り、炭の赤いところが合わさるように、通気性が良いように並べる。

そのまま動かさずにじわりじわりと火が熾るのを待つ。始めにピシピシと音を立て、全体が赤くあかくなり、いつのまにか静かに燃えて鉄瓶がシュンシュンと蒸気してくる。

火鉢

 

火をつなぐため早めに新しい炭を入れておこう。赤い熱い炭の下に大きめの炭を入れておく。

すぐに火を強くしたい時はこまかい炭を上に足し、灰をかきわけて空気の通りを良くする。

火を沈めたければ灰を寄せる。

寝る前には、灰を掘って新しい大きい火持ちの良さそうな炭を2個以上一番下に入れて、燃えている炭を上にのせて、すっかり灰をかぶせる。

火鉢

 

翌朝も火鉢のぬくもりで部屋がなんとなく冷え切っていない。

そして灰の中からあかあかと暖を放つ炭を掘り出すときは必ずワクワクして一日が始まる。

炭の樹種によっても、火持ちも熱量も違う。

 

⬛︎注意喚起!換気は大事!

一番気になる一酸化中毒ですが、炭が完全燃焼していればまぁまぁ大丈夫ということがわかりました。

なんとなくやる気がおきない、と思ったら一酸化中毒の傾向なのですぐに換気をしましょう。

私も使い始めた頃は要領を得なくて、火鉢の火の調整に火吹き竹のようなものを使ったり、無理やりな燃やし方をして何度となくかなり重度の一酸化中毒になりました。

なんとなく気づくとだるくて何もやる気がおきない。

どうしたことかと思っているうちに頭痛がする。

だるくて身体中が重く、階段が登れない。

などの症状には呉々も気をつけましょう。

この程度であれば寝て起きれば治りますので。

 

 

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